2019年10月12日

凍座が求める『地獄』 ~るろうに剣心北海道編 第19幕『地獄の産物』感想 ジャンプSQ2019年11月号~





今回は剣心の一団の中で最年長で、一番酸いも甘いもかみ分けた永倉新八の、尋問というよりは提案で始まった。

『凍座達剣客兵器が求めるのは、諸外国の侵略を防ぐため、一騎当千の猛者を育成すること。
言い換えると文字通り一人で千人の敵を倒すものではなく、そのものが戦場に現れると味方千人が奮い立ち、敵千人が恐れおののく者』


そういった者たちが、近藤勇、土方歳三、高杉晋作、西郷隆盛……と出てきたわけだけど、西郷の目が怖い……。

近年の西郷は、情に厚い古武士というより、権謀術数にたけた政治家としての一面が強調されて描かれて」いて、龍馬暗殺の黒幕が彼という説もあるぐらい。
確かに西郷は、禁門の変の時は公武合体派で、新選組を含む会津藩と協力して長州藩の掃討に当たっていた立場か。
どっちにしても永倉が近藤、土方、西郷と一番歴史の猛者と接触することが多かったのは確かであろう。

そんな永倉が提案したのは。

『猛者の育成という点は、明治政府の富国強兵の方針と大差ない。
方針が同じなのだから、なぜ実検戦闘なんて破壊活動ではなく、政府に取り入らないのか?
これまでの実検戦闘についても、罪一等ぐらいは減らしてくれるはず』


ということだった。斎藤も政府が裁量を握るのならば警官としての仕事を優先させて不問にするし、剣心も剣客としての立場上、力そのものを否定はしていない。
大事なのはそれをどう使うか、ということだった。

考えてみれば仮面ライダーも、昭和のころからライダーの力と敵の力が表裏一体で、鎧武の時には主人公の兄貴分が、
「力そのものに善悪はない」

というセリフまで出している。
日本人は安定志向が強いから、「金は汚いもの」という考えがいまだに残っていて、いたずらに権力や金を手にするよりは、平凡な人間として愛情の世界に生きるのがいいと長い間思われていたけど、今のようなイノベーションのような時代はどうだか。

うちの父も『庶民、庶民』とよく言うが、僕に言わせれば
『庶民の庶民の言って、横並びと現状維持に甘んじている限り、一向に状況は好転しないのではないか』

と思っているのである。


少し話が王道にそれたが、永倉の提案に対して凍座の答えは、
『却下』

「力だけを得るようでは、本当の猛者にはなれない。
必要なのは逆境にも打ち勝つ強靭な精神。
それは社会の不条理・深い悲しみ・挫折という『地獄』の中で出来上がる」


共感はしつつも、かといって納得できないと考える中に、凍座の目が新たなる『闘姿』をとらえた。
宗次郎に憎しみを向けた三島栄次である。
その闘姿は、函館山での戦いの『角を隠した小鬼』ではなく、『角をむき出しにした鬼そのもの』になっていた。
栄次は宗次郎に発砲し――


単行本2巻のキャラクターファイルで、『栄次の隠した角がむき出しになるときがくる』『小鬼はいずれ鬼になる』とあったけれど、角をむき出しにするのが早すぎるんじゃないかなあ。

勿論宗次郎はそれでブチギレる人間じゃないとしても、なぜ自分を撃ってきたのかは聞くはず。
そのなかで栄次も改心するんだろうけど、昭和の特撮ものって最初は敵組織に家族を殺されてその復讐で戦い、やがて行き詰ってそれぞれの正義感で戦うというのが王道だったしなあ。
最近話の展開がちょっと冗長になってきただけに、この辺りも不安。


ともあれ、凍座の言もわからなくもない。
苦しみもまた、創造性や精神性を向上するのには必要だ。

(余談だが浦沢直樹氏の『PLUTO』の天馬博士は、ロボットが限りなく人間に近づく中では、ロボットの優秀な頭脳も「作る」のではなく「育つ」ものと言っていた。
「深い悲しみや挫折が、電子頭脳を育てる」
「間違う頭脳こそ完璧」
「ロボットの喜怒哀楽を抑える制御装置が、電子頭脳の成長を阻んでいる」
だった。人間にも共通する。)
ともあれ、そう言った人たちって、ちょっと偏屈になってくるのが難点なんだよな。発達障害の集いで会った友達って、父に蒸発されたり虐待を受けたりしてるんだけど、だからこそ、他人の苦労がゆとりっ子の苦労のように皆思えてしまっている。

清濁併せのむ器の大きさはいつの時代も大事だけど、多くの人々にトラウマを味わわせるのが精神性の向上やその器を広くするのに必要だとは思えない。
そのトラウマを植え付けられた栄次が次にどのように動き、それが剣心たちにどのような思いを抱かせ、凍座に伝えるのがポイントかも。




      
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2019年10月11日のつぶやき
































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