2022年12月18日

登り詰めた先にあったのは ~NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人 最終回「報いの時」』感想~

鎌倉を坂東武者が治める、坂東武者の世界にするために、幾人もの御家人たちや上皇を粛正してきた北条義時。
その最期は、親友に裏切られて毒を提供され、自身を恨んだ妻に毒を盛られ、最後は息子を粛正されて恨みに思った姉の北条政子に、解毒剤を捨てられ見殺しにされるという最期だった。
それでもやるべきことがまだあると、苦しみながら這うその最期は、切れ者でも天下の大悪人でもなく、一人の人間だったようにも思える。
鎌倉殿の13人 北条義時.png

ちょうど物語の折り返し地点で源頼朝が最期を迎えていたが、ドラマでは和田義盛と畠山重忠が
『あの人が死んで悲しむのはほんの一握り』
とこぼしていたが、義時もまたそのような最期をたどっていったといえよう。
新しい世の、新しい国を作り上げようと躍起になっていたその先には、妻とも、親友とも、そして姉とも心が離れてしまった一人の人間しかいなかった気がする。



さて、物語の最初は、承久の乱で後鳥羽上皇に反旗を翻すことになった鎌倉御家人たちの戦いから始まることになる。
ここで鎌倉の総大将として泰時が選ばれたあたり、彼も心身ともに成長したように思える。
和田合戦のヒントから考えて、家々を取り壊していかだにするあたりはよく学んでいるといえようか。
対して、後鳥羽上皇が前線に出なかったこと(出ていたらそれはそれで歴史が変わっていたのだろうが)、および
『自分を担ぎ上げようとした奸賊を打ち払ったこと、ご苦労であった』
というのは明らかに見苦しい自己弁護というべきものだった。

逆籠に乗せられて罪人として島流しに合うあたりは、当然のことだといえようか。


さて、義時の妻・のえは兄を見殺しにされたことや、自身の息子を跡取りにしたいという権力欲から、義時に毒を盛る。
史実でも義時の死の際に、妻が毒を盛ったといううわさが流れるぐらいだから、これは史実を踏まえたエピソードといえようか。


一方で、三浦義村も義時の毒殺のために毒を提供したという事実を、のえをかいして義時は知る。
無二の親友であった彼に完全に裏切られた時の思いはいかばかりだったか。
義村は、才能も美貌もはるかに劣っているはずの義時がトップに上り詰めたことに嫉妬していたことを明かす。
かなり早い段階から、義時と吉村の心は離れていたのかもしれない。



そして、北条政子。
まさか頼家の最期の真相を、この時点まで打ち明けていなかったとは思わなかった。
病ではなく義時が命じて粛清した、となれば、政子も許すことはできなかったのだろう。


結局、武士の世と鎌倉政権盤石化のために血で血を洗う粛正劇を繰り返してきた彼の最期は、親しい人から次々と裏切られ、見殺しにされた最期であったといえる。


北条小四郎義時、62歳。
史実の彼の死因は、脚気と暑気だったと伝わる。
                   

2022年12月13日

最後の戦いで示された北条義時の是非 ~NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人 第47回「ある朝敵、ある演説」』感想~

幕府と朝廷の対立はさらに深まっていき、後鳥羽上皇は北条義時を討つ決意をする。
いさめ役だった慈円僧正の意見も聞かなくなったのが運の尽きか。
この時に京都守護であったのえの兄が見殺しにされ、のえは夫・義時を恨むことになるようだけど。
てっきり源仲章が殺されて義時を恨むのかと僕は思ったけれど、今回のことで恨むようになるわけか。
史実でも義時の妻が彼を毒殺したといううわさがあるらしいのだが、今回はのえが義時を毒殺する形になるのではないかと僕は見ている。



そして、義時追討の院宣が出され、義時は死ぬ覚悟で京に向かおうとする。
『伊豆の田舎侍であった自分が、源氏や平家同様、天皇に名指しされるほどに出世したとは面白い人生だ』
鎌倉殿の13人 死を覚悟した北条義時.png

とこぼしていたけれど、片田舎の侍であった義時が鎌倉政権のナンバー2となり、やがてトップとして上り詰めるというのは、史実の義時も数奇な人生だったと思える。
もちろん冷酷な粛清も多々繰り返したのは事実。

だからこそ、姉・政子は彼をかばおうとしたのではないだろうか。


そしていよいよ、政子の御家人たちに対する大演説が始まる。
『頼朝公の御恩は、海よりも深く、山よりも高い云々』
という演説はあまりにも有名だが、今回はそれが描かれた文を読むのを途中でやめて、執権という幕府最高権力者に上り詰めた義時の是非について話すというのが非常に秀逸で面白かった。
『許されざる粛清劇を繰り返したのも事実』
『しかし、この人は常に生真面目で、私欲に走ったことは一度もない』
『西の言いなりになるか、坂東武者の世を作り上げるかはこの戦にかかっている』

特に3番目のセリフは、今は亡き北条義時の兄・宗時のセリフの伏線の結晶と言っていい
『新選組!』のセリフ「尽忠報国の士、あっぱれなり」と並んで秀逸な伏線と言っていいだろう。


最後の決戦が繰り広げられる中で、気になるのは三浦義村。
北条に代わり自分が最高権力者に上り詰めようとしている中で、三浦家が生き延びる策も考えていると。
彼自身は北条につくのだろうけれど、義時の最期に義村がどうかかわるのかも気になる。
                   

2022年12月05日

実衣の危機と朝廷との関係 ~NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』~

前回、実衣は権力欲から源氏の血を引く息子・阿野時元をそそのかし、次の鎌倉殿になるようけしかけているが、史実通り時元は謀反の罪で北条義時に誅殺される。
『姉(政子)が頼朝の妻にならなければこんなことにはならなかった』
と言っていたが、考えてみるとこれ逆恨みなんだよな。
史実では実衣が時元の謀反に関わったという記録はないらしいけれど。
鎌倉殿の13人 実衣の危機と朝廷との関係.png

情に流されることを恐れてか、義時は妹の実衣を厳罰に処そうと試みたけれど、最終的には政子の手によって救われることになる。
その理由が、鎌倉将軍不在の幕府の中で、政子自身が『尼将軍』つまり幕府の最高権力者となったことで実衣を釈放できたという展開は驚きだったけれど。


源実朝が試みていた皇族将軍を迎え入れるという話は、実朝暗殺により頓挫となり、代わって頼朝の遠縁で摂関家でもあった三寅(のち4代将軍九条頼経)を迎え入れるということで話がまとまり始める。
しかしその仲介を行う慈円を演じる山寺宏一さん、声がいいうえに早口上手いな。
三寅が幼かったということで、それで政子が『尼将軍』として中継ぎになるわけか。『おんな城主直虎』にちょっと似てる。

(ちなみに史実の皇族将軍は、5代目執権北条時頼の代に、宗尊親王を第6代将軍に入れるということで成立している。)


ただ、実朝というかすがいがなくなった朝廷と幕府との溝は深まることになる。
所詮皇族にとって、伊豆の田舎侍が東国を牛耳るのは気に入らないということなのか。
蹴鞠のうまいトキューサこと北条時房と蹴鞠の勝負をして、いったん和解をしているように見えても、やはりどこか後鳥羽上皇は納得していないよう。

そしていよいよ、北条義時追放の宣旨、そして承久の乱がおこるというわけね。


ちなみに史実の実衣こと阿波局は、兄の義時の最期を看取りつつ、承久の乱から6年後の1227年に亡くなっている。
北条政子同様近しい家族を失い、孤独な老後を送ったようだが、彼女の死後、北条泰時は大叔母だということで30日の喪に服したという。